謹賀新年

旧年中はご愛顧を賜り、心からお礼申し上げます。

新型コロナウィルスの影響で、いまだ世界的に安定しない状況が続いております。

私たちクロスロードは、
「少しでも気分の上がる、
楽しくなる靴を履いていただきたい」

そのような思いで靴をつくり、みなさまの元にお届けしたいと考えています。

そんな当社も、2022年に創業40周年を迎えます。
クロスロードを代表するブランド「あしながおじさん」の生みの親でもある創業者(現会長)の田邉 章に、あしながおじさんの名前の由来や誕生秘話、そしてこれからのヴィジョンなどを聞きました。

新年のごあいさつに代えてお送りする、会長インタビュー。
皆さまぜひお楽しみください。

クロスロード浅草本社・会長室にて

一筆で描かれた“あしながおじさん”

まずは、「あしながおじさん」という特徴的なブランドネームについて、この名前の由来は何だったのでしょうか?

僕が前職で小売業に携わっていた時に、店舗設計について指導を受けた恩師と呼べる方がいました。その方は画家で、絵を描くかたわら店舗の設計なども手掛ける、多才な方でした。

それからしばらく後、僕が前職を退職した際に、あいさつのため先生のお宅を訪ねたんですね。それで自分で新しいブランドを始めることを相談したところ、あっさりと、「じゃあ僕がブランド名を考えるよ」と。いくつか候補を出してくださった中で、僕が選んだのが「あしながおじさん」でした。あしながおじさんはアメリカの作家、ウェブスターが書いたとても有名な小説ですが、これがブランド名の由来です。

あしながおじさんを選んだ僕を見た先生は、おもむろに筆を取り、ステッキを持ったノッポなおじさんの絵と、あしながおじさんの文字を描いたんです。その場で、さっと。今でもブランドのロゴになっている絵と文字です。

当初のブランドロゴ
デビュー時の靴の中敷には、「あしながおじさん」の文字のみが印字されていたそう

現在も社内に飾ってある恩師の作品

たった2デザインからのスタート

— あしながおじさんブランド誕生当初は、どのようなデザインだったのですか?

僕があしながおじさんを始めた当時(1978年頃)、ケミカルシューズ(一般的には合成皮革の靴のこと)は、ミセス向けのものばかり。今と違って、若者が好むようなデザインもありませんでした。そこで合成皮革を使って10代のヤング向けのシンプルなカッターシューズ(フラットシューズ)を作ったんです。コロンとした丸い木型で可愛らしいフォルムにしました。それと同じ木型を使ったストラップシューズも併せて作りました。
これがブランドデビューのアイテムです。たった2つの靴からのスタートでした。

— 2つのアイテムでスタートし、お客さまの反応はどんな感じでしたか?

これまで見たことのない、丸みのある「おでこ靴」のデザインや、手頃な値段。その新しさが当時の若い方に受け入れられました。原宿の靴屋さんに商品を置いてもらったところ、ありがたいことに大ヒット。お店に商品を直接納品して事務所へ戻ってきたら、留守電には既に追加注文の電話が入っていた、なんてこともありました。
そして先の2デザインの後にも、様々なアイテムを増やしていきました。

それまで、日本の若い女性はオーソドックスな革製のパンプスを履くのが一般的でした。そんな時代に、ヨーロッパのストリートファッションのような、カジュアルでモード感のあるデザインは大変新鮮に映ったのだと思います。そして、それまで高年齢層向けだったケミカルシューズは、とうとうオシャレなファッションアイテムとなりました。靴に対する若者の意識・動向が変わったんです。

ほかにはないものをつくる

— 現在のあしながおじさんはほとんどが革製ですが、合成皮革としてスタートしたのは驚きでした。そこからまた革靴に切り替わるのは、どのような経緯だったのですか?

ケミカルシューズがファッションアイテムとなってくると、各社がこぞってヤング向けケミカルシューズを作り始めました。これはまずいなと思いました。大手が参入してくれば、あしながおじさんのような小さな規模のブランドは、すぐに埋もれてしまう。
そこで、ケミカルシューズをやめ、ブランドの主軸をレザーアイテムに変更したんです。

あしながおじさんで作る初めてのレザーシューズ。まずデザインしたのは、マニッシュシューズでした。メンズシューズを女性用にアレンジして、デザインしなおしたら面白いんじゃないかと思ったんです。
今でこそ、マニッシュシューズは定番アイテムのひとつですが、当時(1980年代)、女性がマニッシュを履くという文化はほぼありませんでした。

そこが重要だったんです。“今の世の中にないもの”こそ、チャンスがあると。

昔購入した参考靴の厚底マニッシュ

同時に材料にもこだわっていました。もともと前職で靴の材料を扱っていたのもあり、よく新しい材料を探しに行っていましたね。浅草橋(東京台東区)にはカバンの材料屋さんが多く揃っている場所があるんですけど、その辺りにも面白い素材はないかとよく探しにいっていました。これまでにないもの。新しいデザイン。常にそればかりを考えていましたね。

— デザインのインスピレーションはどこから生まれるのですか?

最新の流行を知ることはもちろんですが、さまざまな文化やファッション、これらを実際に見て、“体感”することがとても重要だと思います。僕は国内だけではなく、毎年必ずヨーロッパ各国やアメリカへ出かけ、デザインのインスピレーションを得てきました。各国の展示会を見るだけではありません。街を歩き、素敵な店のショーウィンドウや道行く人々をながめる。実際に動き、自分の五感を通じて体感すること。この積み重ねから、新しい発想が生まれてきます。

当時ヨーロッパから買い付けた厚底レースアップブーツ


アメリカ・ロサンゼルスで見つけた珍しい置物

— 先ほどからお伺いしていますと、「他にないもの」「新しいもの」という言葉が繰り返し出てきます。これがデザインのポイントなんでしょうか?

僕が靴のノウハウを覚えた前職の社長がことあるごとに仰っていたのが「よそにないものを作れ」という言葉でした。この言葉は、そのまま僕のモットーとなっています。

あしながおじさんは、ケミカルシューズからスタートしましたが、常に「その時どこにもなかったデザイン」を目指してきました。丸っこいつま先や、履きやすくボリュームのあるモールドソール。デザインもカジュアルだったりスポーティだったり。

あしながおじさんを代表するデザインである「おでこ靴」や「厚底」も、ほかにはないものを作るという考えから出てきたデザインです。

新しくて、可愛い。他にはない個性的なデザイン。これがあしながおじさんというブランドが目指してきたものであり、そのままブランドの“らしさ”になっていきました。

— 一世を風靡したアイドルの山口百恵さんや松田聖子さんも、あしながおじさんを履いたとか。

ステージで使用していただきました。山口百恵さんの時は特注デザインでしたね。同じ形のサンダルを色違いで4点ご用意しました。円錐形のヒールが特徴的なデザインでしたね。ご本人様にもお気に召していただけたようです。

— 最近ではAKB48や乃木坂46などのステージ衣装にあしながおじさんの靴が選ばれるなど、個性的なあしながおじさんのデザインが求められている気がします。

そうですね、ありがたいことです。

これからのあしながおじさん

— “今”のあしながおじさんについて。新たに企画されているものはありますか?

実は今、新しいレースアップシューズを企画中です。その靴に使う厚底のモールドソールからデザインしている最中です。まだまだ練らなくてはいけないですが、おおよそのデザインは頭に浮かんでいます。ここ最近クラシックトラッドの流れが来ていることもあり、少しクラシックさも感じられるデザインになるのではないでしょうか。

— それは楽しみです。これからのあしながおじさんは、ブランドとしてどのように発展させたいと考えていますか?

これまでと同じく “他にはないものをデザインする”という考えはずっと変わりません。そして80年代や90年代ファッションがリバイバルしたように、ファッションは繰り返します。ですから、新しいデザインにも昔の“匂い”をあえて残しておくことも大事ですね。

新しいものを作る、これまでにないものをデザインするには発想力がとても大切です。勘といってもいいかもしれません。それには常にアンテナを張っておくこと。多くのものを見聞きし、体感すること。

そしてもうひとつ、度胸。これも大切です。先ほど話した企画中の新しい厚底レースアップシューズ。これだって、実際に世の中に受け入れられるかどうかは分かりません。新しいものを作り出すのは、常に怖さが付きまといます。誰も正解なんて分からない。ただ、それに臆してしまってはいけない。僕がスタッフに常々話していることです。とりあえずやってみる。チャレンジすることです。

— そうですね、当社の社風になっているものですよね。“あしながイズム”といってもいいかもしれません。

*****

一時間半に渡ったインタビューでは、あしながおじさん誕生秘話から、会社設立の経緯や歴史など、多岐に渡るエピソードを聞くことが出来ました。

最後に、あしながおじさん“復刻版”の話題を少しだけ。

長年あしながおじさんをご愛用してくださる多くのお客さまから、過去の商品を復刻してほしいというリクエストをいただいております。
今回、インタビューの合間に会長に直接伝えたところ、何かひらめいた様子でした。

もしかしたら、皆さまに近いうちに楽しいご報告ができるかもしれません。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

多くは割愛させていただきましたが、お伝えしたいエピソードがたくさんありました。
また機会があればぜひ皆さまにもご披露したいと思います。

本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

株式会社クロスロード会長
田邉 章 略歴

主に靴の材料を扱う会社へ就職。さらに同社にて靴販売や仕入れなどを経験したのち、商品企画を担当。
企画製造から小売り販売までと靴及び業界への深い知識を得る。同社を退職後、1982年7月東京浅草にて株式会社クロスロードを創業。
なお、ブランド「あしながおじさん」は会社創業より遡ること4年。1978年に田邊の手によって誕生した。



No.8980631 ギャザーストラップパンプス
あしながおじさんブランド誕生時のアイテムが形を変え、現在はbyあしながおじさんで展開しているストラップパンプス。"丸"に近いコロンとしたトゥラインは、トレンドに左右されず可愛らしさを追求してきた、あしながおじさんを代表する一足となっています。ちょこっとヒールが付いていることで、疲れにくく、女の子らしさを忘れないデザインとなっています。



No.0701021 厚底レースアップブーツ
90年代のあしながおじさんを代表する前がモールドソールになったトラッドブーツ。ソールに厚みがあることでボリューム感が生まれ、当時ではあまりなかった独特の見た目に。また弾力のある返りのよいソールを使うことで、従来のソールとは違い、屈曲性のあるしなやかな履き心地となりました。卒業式の袴や成人式の振袖コーデなどにも支持されている、現在まで人気のロングセラーアイテムです。